「金融庁への登録」とは

投資顧問は、誰でも自由に行えるわけではありません。 金融商品取引法による規制の対象になっています。 政府に申請書を提出し、「金融商品取引業者」として登録を受ける必要があります。

区分は「投資助言・代理業」

金融商品取引業者の登録の区分は4種類あり、このうち投資顧問は「投資助言・代理業」という区分に属します。

地方財務局に申請

申請書類の提出先は、全国の9つの地域ごとにある「財務局」です。財務局とは、財務省・金融庁の下部組織です。金融機関の監督などを行っています。関東の場合は、関東財務局になります。

登録の条件

投資顧問として登録が認められるには、「登録拒否事由」がないことが絶対条件です。 拒否事由とは、ずばり、過去に「法律違反(罰金)」「登録取消」などの前歴があるか否かです。 悪い前歴があると、登録申請が却下されます。

過去5年以内の違反歴の有無

具体的には、以下が申請却下の理由になります。

(1) 過去5年以内に金融商品取引業の登録を取り消された。
(2) 過去5年以内に金融商品取引法等に違反して罰金刑を科された。

供託金500万円の納付が必要

登録申請が完了したら、供託金500万円を納めなければなりません。 登録後、法律違反を犯すと、この供託金が没収されることがあります。

業者登録簿

登録完了後、「商号」「登録年月日」などが公的文書に記録されます。 この記録される名簿を「金融商品取引業者登録簿」といいます。 登録簿は誰でも閲覧できる状態に置かれます。これを「公衆縦覧」といいます。 インターネットでも公開されています。 名簿に掲載されている業者には、投資顧問以外の金融業者(証券会社、投資信託、投資ファンドなど)も含まれます。
金融庁が公開している業者一覧→

登録後間もなく「検査」も

登録して間もない段階で、金融庁の証券取引等監視委員会から検査を受けることがあります。 悪徳業者を早めに見つけて被害を防ぐためです。 検査官が、会社を訪れて書類を確認したり、代表者を聴取したりします。 重大な不正が見つかれば、登録が取り消されることがあります。 細かい不備であれば、随時報告を求めて指導します。

毎年、事業報告書を提出

投資顧問として登録された後は、「事業報告書」を毎年、提出しなければなりません。

登録業者かどうか確認する

消費者サイドとしては、投資顧問を利用する際には、必ず「登録業者」であることを確認しましょう。登録業者かどうかは、金融庁や日本証券業協会の公式サイトで確かめられます。

金融商品取引業者の4つの区分

「金融商品取引業者」は、4種類に分かれています。 投資顧問を中心とする「投資助言・代理業」のほか、 「第一種金融商品取引業」「第二種金融商品取引業」「投資運用業」があります。

金融商品取引業 区分 業種
第一種金融商品取引業 証券会社、FX業者、一部の投資顧問会社(例:タワー投資顧問)など
第二種金融商品取引業 リース会社、一部の投資顧問会社(例:野村不動産投資顧問)など
投資運用業 運用会社、一部の投資顧問会社など
投資助言・代理業 投資顧問会社(例:アテル投資顧問、プレナス投資顧問、IFA(独立系資産アドバイザー)など

投資顧問の区分は?

投資顧問は上記の4区分のうち、主に「投資助言・代理業」に属します。 アテル投資顧問(会社名:株式会社インベストジャパン)も投資助言・代理業として登録されています。 投資顧問であっても、顧客の資産を預かって運用まで行う会社は、他の区分にも該当することになります。

有名なタワー投資顧問は「第1種」

例えば、日本で最も有名な独立系投資顧問である「タワー投資顧問」は、投資助言・代理業に加えて、「第1種金融商品取引業」及び「投資運用業」としても登録されています。

「第一種」だけの拒否事由

第一種金融商品取引業については、資格を得るにあたって、最も厳しい条件が課されています。 具体的には「財務」と「主要株主」についての規制です。

(1)財務の規制
資本金や純資産

まず、第一種金融商品取引業の登録が認められるためには、財務状況がある程度強固でなければなりません。具体的な条件として、資本金や純資産額が政令で定める一定の金額を上回る必要があります。

自己資本比率

また、自己資本規制比率が120%を下回る場合は、第一種金融商品取引業の登録ができません。自己資本規制比率の算出方法は以下の通りです。

自己資本の額(固定的な資産を除いた自己資本の額)÷リスク相当額(リスクに対応するため必要な金額)×100
毎月末に届け出

第一種金融商品取引業者は、自己資本規制比率を算出して、毎月末に金融庁に報告しなければなりません。金融庁は、自己資本規制比率が120%を下回ると、財産の供託などを命じることができます。

業務停止命令

自己資本規制比率が100%を下回ると、金融庁は、業務停止命令を出すことができます。状況が回復する見込みがなければ、登録を取り消すこともできます。

(2)主要株主に関する規制

主要株主とは、議決権の20%以上を握っている株主のことです。個人または法人です。 第一種金融商品取引業の主要株主は、議決権保有割合などの事項を記載した届出書を金融庁に提出しなければなりません。 この届出書には、金融商品取引業の登録拒否事由に該当しないことを誓約する書面などを添付することが必須になります。



「アセット・アドバイザー」と「アセット・マネージャー」

投資顧問には、「アセット・アドバイザー」と「アセット・マネジャー(資産運用者)」があります。 アセット・アドバイザーは助言を行うだけで、運用はあくまで顧客が自分で行います。 アセット・マネジャーは、顧客からお金を預かり、投資を代行します。

投資顧問 アセット・マネージャ
別の呼称 ファイナンシャル・アドバイザー 資産運用者
法律上の位置づけ 助言のみを行う業者 一任業者
業者の例 アテル投資顧問 タワー投資顧問(伝説の相場師・清原達郎氏が所属)


ファイナンシャル・プランナー(FP)の資格は必須ではない

投資顧問で働く人の多くが、ファイナンシャル・プランナー(FP)の資格を保有しています。 しかし、FPの資格は必須ではありません。

相談役(コンサルタント)や助言者(アドバイザー)としての基礎知識

FPの資格を取得する過程で、様々な知識を身に着けることができます。投資・金融に関する広範かつ基礎的な知識です。 この知識は、投資顧問業者として相談役(コンサルタント)や助言者(アドバイザー)を務める際に役立ちます。 例えば投資ポートフォリオのバランスを考えたり、リスクを説明したりするうえで、メリットが大きいです。 とはいえ、FPの資格がなければ投資顧問として「失格」ということにはなりません。FP試験に合格していなくても、知識や経験が豊富な人は大勢います。 大切なのは、「実践」の場面でどれだけ有益な助言ができるかです。

FPの人数

FPの人数(二重、三重にカウントされていると思われる)
資格の種類 日本FP協会 金融財政事情研究会※
CFP・1級技能士 2万2325 2万1835
AFP・2級技能士 16万445 59万732
3級技能士 90万3285
18万2770 137万8850

※2002年~2019年前期までの資格合計者

出典:「資産形成の王道」(小林治行著)
データ元:日本FP協会 金融財政事情研究会



投資顧問を選ぶ際のポイント

投資顧問は登録をすれば業務を行うことができるため、多数の業者が存在しています。 その中から、私たち投資家はどの業者を選ぶべきなのでしょうか。以下の点が、選択の際のポイントになり得ます。

チェックポイント
(1) 基本ポリシー
(2) リスクを考慮した助言ができるか
(3) コンプライアンス

(1)基本ポリシー

投資顧問会社の助言には、その会社の相場観や投資哲学(ポリシー)が反映されます。 とりわけ、評価の高い投資顧問会社は、一貫した裏付けのある理論に基づく投資助言を行っている場合が多いです。 同じくらい高評価を得ている投資顧問でも、基本ポートフォリオなどの面で全く逆の考えを採用している例もあります。 しかし、自らのポリシーに忠実であるという傾向は似通っています。 しっかりとした投資哲学があるかどうか、事前にチェックすることが大切です。

それぞれの尺度

釣りの名人たちは、 自分しか知らない必ず釣れる秘密の場所を持っています。 これと同じように、 優れた投資顧問も、 自分なりの尺度を持っています。

事例:インベストジャパン

株式会社インベストジャパン(河端哲朗社長、東京)が運営する「アテル投資顧問」は、独自の哲学として「サイエンス株投資術」を掲げています。 このサイエンス株投資術は、日経平均や東証株価指数(TOPIX)などの相場全体の値動きに関係なく、堅実に利益を出すことに適していると評価されています。 つまり、足元の相場や他人の動きに惑わされることなく、 科学的かつ経験的に導き出されたポリシーに従って推奨銘柄を選ぶのが、インベストジャパンの特徴だとされます。

右往左往しない

株投資で富を築き上げるための最善の方法の一つは、 急成長を遂げている企業の株式に投資することでしょう。 しかし、それを実行に移す際には、 経済やその企業の将来をある程度信じなければなりません。 市況が悪い時に右往左往してしまうのは、かえって危険です。 その点、アテル投資顧問の創業者である有宗良治氏(前代表)は、頑固にポリシーを貫くことで有名でした。

(2)リスクを考慮した助言ができるか

また、株投資は、価格変動によって損失を被ることもあります。 投資した企業の業績が順調であっても、金融政策や地政学的なリスク増大などにより、 全体の相場が一気に下落することもあります。 そのような場合にいかに損失を抑えるような助言ができるかという点も、 投資顧問を選ぶ際のポイントです。

(3)コンプライアンス

投資顧問のコンプライアンス(法令順守)体制を監視することは極めて重要です。かつて、計84に上る厚生年金基金から約2000億円の年金運用を受託していた「AIJ投資顧問」が1092億円を消失するという事件が起きました。高い運用実績を売りにしていましたが、虚偽の条件で基金と契約した偽計容疑が発覚しました。金融庁はAIJの登録を取り消す行政処分を行いました。同業や地域の中小企業で作る「総合型」の厚生年金基金が多く、損失穴埋めができない企業の倒産が懸念されました。



海外の有名な投資顧問から学ぶ

日本で「投資顧問」という業態が広まり始めたのは1980年代の半ば以降です。 先進のアメリカと比べると、歴史が浅いです。 米国では一般個人も、投資顧問に頼って資産運用を行う場合が多いです。 一つの慣習として定着しています。 このため、優れた実績を備えた投資顧問が多数存在しています。 ただし、米国の投資顧問の多くは日本で資格を持っておらず、私たち日本人が利用することはできません。 しかし、米国の業者の実態を把握することで、日本における投資顧問選びの参考にすることは可能です。

米ブランデス・インベストメント

1974年に設立された米投資顧問ブランデス・インベストメント・パートナーズは、国際分散投資では世界でトップクラスの実績で知られています。 ブランデスの基本的な手法は「バリュー投資」です。

創業者チャールズ・ブランデス

米ブランデスの創業者チャールズ・ブランデスは、「バリュー投資の父」として有名なベンジャミン・グラハムから直接指導を受けました。 グラハムの著書「賢明な投資家」「証券分析」は、 投資家にとって有名なバイブルです。

1998年の世界同時株安下の緊急レポート

ブランデスが一躍脚光を浴びたのは、1998年です。世界同時株安を受け「長期スタンスに立った割安株への投資チャンス到来」という緊急リポートを発表したのです。

緊急リポートでは、株式相場は「深刻な政治リスク、経済的リスク、為替リスクに直面している」としながらも、「ファンダメンタルズよりも感情(不安心理)に振り回されている」と指摘。 そのうえで、「経済は周期的に動いており3~5年後にはアジアなどのエマージング・マーケットは混乱を切り抜け再び経済成長軌道に乗る」として、長期的な観点での投資が有効であると主張しました。銘柄選別の決め手は、「財務内容」だとしました。
このレポートを信じて行動した多くの投資家が、後で多額の利益を獲得したと言われています。



投資顧問とは

投資顧問とは、個人や機関投資家に対して、資産を効果的に運用するための助言やサービスを提供する専門家です。投資家の特定の目標やリスク許容度に基づいて、適切な投資戦略やポートフォリオを作成するのに役立ちます。

投資顧問の主な役割は、市場状況や投資商品の分析、リサーチを行い、クライアントに適切な投資アドバイスを提供することです。投資家の目標やリスク許容度に合わせて、資産クラスの選択、ポートフォリオの構築、資金配分、リバランスなどの戦略を立案します。

投資顧問には、投資家の利益を最大化することを目指し、専門的な知識や経験を活かして投資機会を特定することが期待されています。市場の動向やトレンドを分析し、ポートフォリオのパフォーマンスをモニタリングすることで、投資家の資産を最適化する努力をします。

投資顧問の中には、金融機関や証券会社に所属している人もいます。また、一部の投資顧問は、特定の投資商品や戦略に特化してサービスを提供することもあります。

投資顧問を選ぶ際には、信頼性、実績、料金、口コミ・評判などを慎重に比較・検討する必要があります。

「旧・投資顧問業法」成立の経緯

「投資ジャーナル事件」

1984年(昭和59年)8月24日、当時、投資コンサルタントとして派手な活動をしていた「投資ジャーナル」グループが、無免許で株の売買の取り次ぎをし、証券取引法に違反した容疑で、警視庁に摘発された。これが「投資ジャーナル事件」である。 このグループの中心人物は、会長の中江滋樹(なかえ・しげき)。翌1985年6月19日、中江会長らが詐欺容疑で逮捕された。グループの会員1万人の被害は200億円以上だった。経済事件としては史上最大級の規模であった。 株式投資をめぐる甘い儲け話と証券取引のアングラな部分をあらためて浮き彫りにした。投資顧問業法制定のきっかけとなった。

成金ブーム

投資ジャーナル事件が起こった当時は、株式や商品取引をめぐる甘く危険な投資話が、兜町にそうした風潮が入り込みやすいムードがあった。 いわば成金ブームだ。一攫千金の夢をかき立てるような相場環境が続いていた。

具体的な現象
  • 1979~80年の第2次石油危機時の資源株大相場
  • 1980~81年の「誠備グループ」を中心とする仕手筋の跋扈(ばっこ)
  • 1981~82年は日本での金ブームと産金株ラッシュ
  • 所得番付日本一の相場師・是川銀蔵氏の活躍
相場もバブル的

相場もバブル的だった。 全般的にも1981年9月の「グランビル・ショック」を乗り越えた。 強いアメリカ復帰を目指すレーガノミックス株高が起きた。 日本もこれに後押しされる形での上昇相場が続いた。

具体的なバブル的事象
  • 個別での初の株価1万円台(1983年6月、セブン-イレブン・ジャパン)
  • 日経平均も初の1万円大台乗せ(1984年1月)
  • 1983年11月の店頭市場発足。銘柄公開をネタにした儲け話が出た。

悪徳レポート屋

1980年代に入ると、仕手株相場に参戦を勧めるような「レポート屋」が出てきた。 それまでも会員制による大手出版社系の投資レポートはあった。 だが、80年代のレポート屋は、証券業界紙に「相場の当たり屋」とか「連戦連勝」とか、個人投資家を煽るような宣伝文句の広告を出した。 レポートの購読会員を募った。

仕手筋に結び付く

レポート屋が集めたカネが、一部の仕手筋とも結びついた。 「大成功銘柄」として、また宣伝のネタになった。 これでまた金集めの輪を広げるというやり方だ。 こうしたレポート商法屋は、兜町や北浜界隈を中心に全国で200社を超えていた。 金を集めるだけの手段としてリポート商法を使うという連中も入り込んできていた。

悪徳会社の問題点

これら悪徳会社の多くは、業界紙や投資情報誌で「銘柄無料相談、有望銘柄伝授」などと宣伝して客を募集。 数万円から数十万円の入会金や顧問料を取った。 なかには街の金融業者と組んで担保金の何倍もの融資をした。 さらには実際の株式の仲介、売買は行わずに、その金を流用着服するところさえ出てきた。 投資家の欲と無知につけ込み、会員を食い物にしたあくどい商法である。

投資コンサルタントへの規制の不備

単に投資家の「自己責任」の範囲を超えていた。 投資家保護の面でも問題があったといわざるを得ない。 特に、投資コンサルタントを対象とした法律がなかった。 悪徳業者が野放しになっていたことが指摘される。

旧大蔵省の山口光秀事務次官が表明

投資ジャーナル事件は重大な社会問題であった。 金額といい、 巻き込まれた一般投資家の数といい、 強制捜査が開始された1984年8月24日。 当日、旧大蔵省の山口光秀事務次官は「投資顧問業務全般への規制を検討したい」と述べた。 ここから遅ればせながら日本でも、正当な形での投資顧問業への議論が始まっていった。

証券取引審議会が投資顧問に関する「特別部会」設置

1984年10月17日、証券取引審議会(蔵相の諮問機関)は、投資顧問に関する諸問題について議論する「特別部会」を設置することを決めた。12月25日に初会合を開き、審議を開始した。1985年11月19日、「証券投資顧問業のあり方について」と題する報告書をまとめた。

「投資一任業務」の取り扱い

投資顧問業法における最大の焦点は、顧客から資産の一切の運用を任される「投資一任業務」の取り扱いであった。 登録を義務づけた投資顧問業法は、1986年11月25日に施行された。 1987年2月に第1次登録業者136社が公表された。 さらに1987年6月には投資一任業者として56社が認定された。 以後これら法的に整備された業者は次第に増加していくことになった。